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1.盲導犬の誕生から引退まで

盲導犬として活躍するまでには、多くの人に支えられています。
その様子をそれぞれステージを分けてご説明します。

  1. 子犬達の誕生
  2. 盲導犬訓練に備えて
  3. 盲導犬になるための訓練のようす
  4. 盲導犬になれなくても
  5. 盲導犬の誕生
  6. 盲導犬引退〜お疲れさまでした

明日への希望を育むための幸せなコミュニケーションが ささやかな光になりますように。




❶ 子犬の誕生

(誕生~2か月)

(元気で明るいお父さん、お母さん選びから)

盲導犬の育成。それは盲導犬にとって必要な性格や適応力、なおかつ遺伝的な病気を持っていない優れた親犬(繁殖犬)を選ぶことから始まります。犬種は主にラブラドールレトリーバーやゴールデンレトリーバーです。理由は従順な性格でおとなしく、作業犬として優れた性質を持っているからです。また多産で多いときには8頭以上の子犬を産むこともあります。普段、親犬たちは繁殖ボランティア宅にて預かってもらっています。

(みんな一緒にお勉強)

選ばれた両親から生まれた子犬達は約2か月間、母犬や兄弟犬と一緒に繁殖ボランティア宅で生活します。母親からミルクをもらい、排泄の世話を受け、時には子犬同士でじゃれあったり、喧嘩したりしながら「犬社会のルール」を少しずつ学んでいきます。それと同時に、「人間は安心できる存在」ということを認識させるため、声をかけたり触れ合ったりして関わっていきます。成長とともに外部のさまざまな環境や生活音に触れさせながら、人間社会にスムーズにとけ込めるよう大切に育てていきます。




❷ 成長する子犬たち

(2か月~1歳)

(心も体も大きく成長する時間)

子犬達は2か月前後から1歳まで、子犬育成ボランティア(パピーウォーカー)のお家に預けられます。そこではトイレトレーニングをはじめとし、人間社会で生活するための基本的なルールを学びながら、家族の一員としてたっぷりの愛情がパピーウォーカーから注がれます。
また将来、盲導犬として楽しく仕事をするため、日々のお散歩はとても大切になります。犬や猫、鳥などさまざまな動物や子ども達に出会い、時には電車や踏切の音を聞き、車に乗って旅行に出かけたりもします。日々の生活を通して、いろんな場所でも楽しく歩いたり、さまざまな環境でも落ち着いて行動できるよう経験を積んでいきます。
このような時間の中でたっぷりと愛情を注がれた子犬達は、人間に対して信頼感が生まれてきます。これは盲導犬となったとき、目の不自由な方と愛情の絆を結ぶ上で、とても大切になります。




❸ 進め!盲導犬への道

(1歳~2歳)

(勇気を持って踏み出す一歩) 

【適性評価(初期評価)】

生後1歳前後で、子犬達は訓練所に戻ってきます。先ず候補犬としての適性評価が行われ、楽しく歩けるか、さまざまな環境でも落ち着けるか、大きな音に過剰に反応しないか、他の犬や猫、鳥などに出会っても適切な行動が取れるかなどの性格的な部分を約1週間かけて行います。また同時に健康体であるかどうかの健康診断も行います。

(盲導犬と呼ばれるために) 

【候補犬訓練】

適性と判断された候補犬は、訓練士と仲良く遊ぶことから始めます。そして、基礎的な訓練(Good,No,Sit,Down,Heel,Comeなど)を通して、コマンドを言われることが楽しいことだと学んでいきます。その後、ハーネスを付け、道を道なりに真っすぐ歩くこと、交差点や段差で停止すること、障害物を回避することなど、実際に街に出て視覚障害者を安全に誘導するための訓練を行います。それらの訓練は、犬の学習に合わせて静かな住宅地から徐々に繁華な地域へと場所を変えて行い、エスカレータや公共交通機関の利用など様々な環境で、盲導犬としての適切な行動がとれるように約6カ月~12カ月間にわたり続けられます。




❹ 新たな家族とともに

(1歳~2歳)

(盲導犬にならなくても)

候補犬のなかには、適性評価もしくは訓練中に盲導犬には向いていないと判断される犬たちがいます。すべての犬が盲導犬になるわけではなく、全体の約30%しか盲導犬にはならないのです。盲導犬にならなかった犬たちは『キャリアチェンジ犬』と呼び名を変え、新たな家族(キャリアチェンジ犬ボランティア)と一緒に家庭犬としての道に進んでいきます。またそれ以外には、別の社会奉仕(介助犬、麻薬探知犬)に携わる犬たちもいます。
ここで誤解しないでいただきたいのは、「キャリアチェンジ犬=犬としてダメではない」ということです。この評価はあくまで盲導犬に限定した判断ですので、犬たちの可能性を否定するものではありません。犬たちにもそれぞれ個性があります。



❺ 盲導犬の誕生

(2歳~約10歳)

(大切なパートナーとの出会い)【共同訓練】

候補犬としての訓練が終了する段階に近づくと、その候補犬が持っている性格的要素や体格などと、盲導犬を希望している視覚障害者が持っているニーズとを照らし合わせ、それに応えれるようなマッチングを行います。そしていよいよ盲導犬希望者と候補犬との共同訓練がはじまります。
初めて盲導犬を持つ方は訓練所に宿泊し、候補犬との共同生活を4週間送りします(2頭目以降は2週~3週間)。この期間に盲導犬と一緒に歩くための技術や知識を習得します。また犬の排泄や食事、グルーミングや基本的な健康管理も学んでいきます。そして何より共同訓練はお互いの信頼関係を築くための大切な時間となります。
多くの方は「犬が好き」であっても、室内で犬と一緒に生活した経験を持っていません。盲導犬というと「歩く」というイメージが強いですが、「犬と一緒に生活し、犬を理解する」ことは非常に重要なことなのです。

【フォローアップ(現地訓練)及びアフターケア】

宿泊での共同訓練が終了した後に、盲導犬利用者が住んでいる地域で現地訓練(フォローアップ)を行います。その地域では盲導犬利用者が歩くルート(通勤、スーパーマーケット、銀行、病院など)や電車、バスの交通機関の利用などを練習します。
この現地訓練が終了した段階ではじめて正式な『盲導犬利用者と盲導犬』が誕生することになり、二人三脚(六脚?)の生活が始まります。盲導犬として活躍できる年数は、犬によって違いはありますが平均すると約8~10年間です。

新しく誕生したこのペアは人間も犬も「初心者マーク」です。失敗もしますし、知らずに周囲に迷惑をかけてしまうことがあるかもしれません。盲導犬は持ったその日から自動的に動く機械ではありませんし、何でも理解し、どんなことでも耐えるスーパードッグでもありません。お互いが一緒に生活し、歩くことによって問題を解決し、理解を深め、少しずつお互いの信頼関係が築かれていきます。また盲導犬利用者が暮らす地域で出会う皆さんの理解とご協力が何より必要となります。



❻ 盲導犬の引退

(10歳~)

(感謝の気持ちを伝える日)【引退】

盲導犬としての責任を果たした犬は、『引退犬』として引退犬ボランティア宅に引き取られ、ゆっくりと余生を過ごします。
ラブラドールやゴールデンといった犬種の寿命は14歳前後です。犬の健康状態を確認しながら盲導犬が10歳~11歳の間に引退するよう利用者と話し合い引退時期を決定します。盲導犬利用者にとっても、また盲導犬にとっても別れはつらいものですが、比較的犬が元気な状態で引退犬ボランティア宅へ引き取られることが望ましいと考えています。犬も年齢を重ねると足腰が弱くなり、疲れやすくなります。また白内障が出たり、耳が聞こえにくくなることもあります。早ければ8~9歳程度で引退しなければならない犬もいます。

一方、次の盲導犬を必要としている利用者は、再度、共同訓練を受けることになります。


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